テロワールを表現したワインとは?テロワール重視は今の時代は無理が出ている?

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ワインについて議論を重ねている時、テロワールという言葉が出てくることがあります。

ワイン会でホストやインポーター、またワインに詳しい方と会話をする際もテロワールという言葉を耳にするかもしれません。

テロワールを表現したワインは素晴らしいですが、一方でテロワールを大切にし過ぎるべきなのか、疑問を感じている方もいるでしょう。

ここでは、現在のワインづくりと照らし合わせながら、ワインのテロワールについてあたためて考えていきます。

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テロワールをあらためて考える

テロワールとは何か、あらためて考えましょう。

テロワールはワイン以外でもよく見かけるようになった言葉ですが、基本的にはワインに特化した概念だと考えられます。

言葉の意味は人によって解釈に違いがあるものの、簡単に言えば1本のワインが生み出されるまでの外的要因全て、またブドウの栽培環境などを包括する概念と考えて良いでしょう。

以前はテロワールは、ワイン用ブドウが栽培されている産地の栽培環境のみを指していましたが、近年はそれに携わる人や文化・伝統、そして郷土料理など幅広いポイントが包括されました。

もはや、ワインができるまでの全てに携わっている何らかの事象こそがテロワールとなっている状況です。

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基本的には栽培環境

テロワールについては上記のような条件で語られることが増えましたが、ワインを評価する上でのテロワールとなれば、やはり栽培環境と考えることができるでしょう。

ワイナリースタッフの結束、ワインショップで働く人たちとの絆もテロワールに含んでも良いでしょうが、ワインの一口飲んだ時に、“このワイナリーのショップで働くバイトさんたちの笑顔が複雑性を醸し出す要因”と評価するテイスターは存在しないはずです。

やはり、石灰質かつ火山灰が多い土壌から来るミネラリティとか、地中海に近いことから塩のニュアンス、乾燥地帯であることから凝縮感がある、冷涼な産地らしいシャープな酸といった栽培環境を評価基準にしているはずでしょう。

さて、栽培環境こそテロワールという考え方から、近年人気なのがナチュラルワインです。

農薬は使わない、亜硫酸などもできる限り使用しない、人的介入もほとんどなしということから、その土地のテロワールを最大限導き出したワインとして評価されています。

ナチュラルワインにカテゴライズされていないワインであっても、できる限りその土地の個性を表現しているとマーケティング的にアピールしており、やはりワインはテロワールつまり、栽培条件を大切にしたお酒であることがわかります。

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テロワールを語るのは無理がある

しかし、中にはそろそろテロワールを語ること自体に無理があるといった話も出てきています。

近年の温暖化の影響、また気候変動による過渡な豪雨や干ばつを伴う極端な降雨量の少なさなど、確実にブドウ栽培を取り巻く環境は厳しさを増し始めているようです。

そのため、ワインメーカーはさまざまな対策を講じており、灌漑設備を整えたり気候に適応した品種を栽培したり、さまざまな醸造テクニックを駆使して質の高いワインを仕上げたり、努力を重ねています。

ここが難しいのですが、テロワールを表現するのであれば対策は取らず、そのヴィンテージでつくられたブドウからワインをつくるのが本筋でしょう。

もちろん、ワイナリーもボランティアではなく売る必要があるため、そんなギャンブルはできません。

では、本当に激しい変化を遂げた栽培環境に対策を取らずに不健全なブドウを使いワインを仕上げ、それをテロワールを反映しているベタ褒めした方が正解なのでしょうか。

テロワールを考えすぎずにまずは、“美味しい”ワインをつくるべきか、美味しくなくてもテロワールやヴィンテージとして諦めて楽しむべきか、ここがワインの難しいところです。

これからワインと多く対峙する中で、一度はテロワールについて考えても良いかもしれません。