耕作放棄地を利用してワインづくり!本当に地域活性化につながるか?

近年、日本で耕作放棄地を利用した地域活性化運動が盛んです。
すでに利用されなくなっった畑を放置せずに再利用することで、新たな地域の特産品や雇用、さらに観光資源を生み出せると考えられています。
そして、その耕作放棄地を利用したものの代表例となっているのがワインづくりです。
6次産業化によるワインが耕作放棄地を救い、そして新たな雇用を創出、その街の特産になるとともに観光資源となると期待されています。
しかし、本当にそれは可能なのか、あらためて考えていきましょう。

耕作放棄地の利用
近年、日本が抱える問題のひとつに耕作放棄地の拡大があります。
農家の高齢化と担い手不足が深刻化している現在、誰も手をつけずに荒れ果てた田畑が日本中あちこちに見られるようになりました。
当然、そこで育てられてきた作物を収穫することはなくなり、さらに荒れ果てた土地が残り続けることで食料自給率の低下はもちろん、環境への悪影響、防災機能の低下など多くの問題が発生し始めてしまいます。
官民が手を組み、日本全国でさまざまな手段で耕作放棄地の減少を目指す取り組みが行われていますが、中でもそこをブドウ畑として再生させ、ワインづくりをスタートさせる利用方法が注目されるようになりました。

メリットが多いと考えられている
全国各地でワインづくりにおける規定が緩くなることでワインづくりの新規参入者が増え、耕作放棄地を自社畑として活用するケースが増加していきます。
近年の日本ワインブームのおかげか、大手ワインメーカーではなく、個人が耕作放棄地を開墾してブドウを植樹、その畑で収穫されたブドウからワインがつくられるようになりました。
その多くが、理想的な土地を探している中でそこにある耕作放棄地を利用するといったかたちで再利用されており、少しずつではありますがブドウ畑によって耕作放棄地が生まれ変わっています。
今、緑が増えることで環境保全にも役立つ一方、ワインづくりにおける雇用が生まれ、さらにそのワインを使ったレストランなど飲食店の増加、観光客を呼び込むといった流れを叶えることができると話題です。
何もない場所をブドウ畑に、そこからワインを生み出することでワイン銘醸地となればワインツーリズムなどで地域活性化が期待できます。まさに、メリットしかないと言えるでしょう。

維持可能か
一方、どこまでビジネスとして成り立つかを考えなければなりません。
事実、ワインだけをつくりその売り上げだけで地域を潤せるワイナリーはごくわずかです。
また、問題はワインづくりには多額の資金が必要となり、ワインビジネスでそれを回収し、さらに黒字化していけるかも経営者の手腕にかかっています。
耕作放棄地を利用する生産者の誰もが、“〇〇を世界のワイン銘醸地へ!”と大風呂敷を掲げますが、そこまで体力が持つのか、さらに本当に銘醸地になるためには産地化させた上で数十年、数百年以上の歴史が必要となるでしょう。
雇用創出と言っても僻地でお金が稼げない、借金だけが残り醸造所が放置され、さらにブドウ畑が放棄される可能性も否めません。
ワインビジネスは非常に難しく、憧れだけで食べていけるものではありません。
現に有名ワイナリーすら、新しい事業をクラウンドファウンディングで補っており、いつまでもファン頼りの経営は厳しいはずです。
耕作放棄地がある、ではワイナリーを作ろう。この構図がどこまで正しいのか、ただただ見守り続けるしかありません。

