日本ワインはなぜ和食と合うかを再考してみた
近年、ワインと和食とのペアリングが当たり前になってきました。
中でも日本ワインの台頭により、日本ワインと和食のペアリングは積極的に推奨されています。
しかし、本当に和食とワインは合うのでしょうか。
そして、なぜ日本ワインと和食は合いやすいのでしょうか。
ここでは、ワイン会でも議題にしてほしい、ワインと和食のペアリングについてあらためて考えてみます。
ワインと和食
ワインと和食と聞くと、多くの人が「寿司と白ワイン」というイメージを抱くかもしれません。
高級寿司店などに行くとシャルドネを利用しているブルゴーニュの白が必ずリストオンされていますし、高級和食店でも白ワインと寿司のペアリングが推奨されています。
一方、赤ワインはうなぎを使った料理やすき焼き、さらに和牛を使った料理とのペアリングも推奨されているようです。
当初、ワインを和食に合わせても美味しくないとか生臭い、さらにはうまみを膨らませないなど、否定的な意見が多くありました。
しかし、和食との相性を全否定するのではなく、チャレンジして楽しむといった人たちが増加。ハイブリッドなペアリングとして、今では和食とワインは当たり前のペアリングスタイルになっているのです。
ワインと和食は違和感のないペアリングを目指す
そもそも、ワインと和食は合うのでしょうか。
その答えは、「和食とワインのペアリングは合うと捉えるのではなく、違和感がないと捉えるべき」です。
例えば、寿司と日本酒の組み合わせは、互いにうまみを膨らますようなペアリング。
そのネタが日本酒によってさらに美味しく感じたり、日本酒によって口の中がうまみで溢れるといった形の楽しみ方です。
一方、ワインの場合は酢飯を使った寿司と醤油などで食べる寿司で、そういった効果が期待できるものは多くありません。
塩を降ったアオリイカなどであればミネラル感が合致し美味しく感じられますが、より美味しくふくよかに…というと少し違います。
赤ワインはとくに顕著であり、赤ワインのタンニンや酸味、果実感が勝ってしまえば、日本酒が持つような膨らますペアリングとはほど遠くなってしまうでしょう。
和食とワインを合わせる時、和食側が違和感なく食べられる、臭みを感じない、ワインや食材の嫌な部分が突出してこないなど、「違和感のないペアリング」がポイントになってきそうです。
日本ワインが和食と合うのはなぜ?
冒頭でお伝えしたように、近年和食とワインを合わせるのであれば日本ワインといった風潮が当たり前になってきました。
「日本の土地で生まれたもの同士、魂が調和するから…」といったファンタジーを語る生産者もいますが、本来「日本ワインは要素的に繊細である」ことがポイントだといわれています。
大手メーカーが五味を図る機器を使い、海外産ワインと日本ワインの成分の強度を調べたところ、やはり日本ワインはいろいろな面において海外産ワインより繊細でした。
和食は基本的に大味というより繊細な味付けであり、さらに味付けが濃くてもボリューム感のあるものは多くありません。
海外産ワインと和食を合わせた時、香りやうまみの面で調和していても「強度」でワインが勝ってしまい、後味や違和感を感じてしまうのです。
一方、日本ワインは要素が少ない繊細さがあるため、和食とのバランスがよく味わいをマスキングしないと考えることができるでしょう。
海外産ワインとは逆に食材の味わいが強く感じ、ワインが後ろで下支えするようなニュアンス。
前述した、「ワインと和食は違和感のないペアリングを目指す」といったところに、完璧に合致するわけです。
日本ワインの進化で和食との相性危ういか?
近年、日本ワインが躍進を続けています。
今まで通り繊細な味わいを継続する生産者がいる一方、よりレベルが高いワインを生み出す生産者が増加中です。
しかし、ワインのレベルが高くなることは、「味わいの要素が増える」ことにつながります。
今後、日本ワインが海外産ワインと同レベルになった時、果たして和食との関係性が変化していくかもしれません。